京都市にある国際日本文化研究センターの所長で、新書「京都ぎらい」で知られる井上章一さん(68)は、京都に来た文化庁の職員は「お気の毒」と感じている。ただ、せっかく来たからには「文化の現場」を見て、霞が関のお役人体質を変えてほしいと願う。井上さんに文化庁の移転について聞いた。
国際日本文化研究センターの2代目所長、故・河合隼雄さんが文化庁長官の時、文化庁の関西分室を提案し、2007年に京都国立博物館に置かれました。文化庁を関西に持ってくる先陣となりました。それが今回実現したので、めでたいことです。これが公式見解ですね。
私個人としては、文化庁の方々に、ややお気の毒だなという印象です。もともと移転は第2次安倍政権の地方創生事業の一環でした。東京一極集中の弊害をなくそうと、中央省庁のいくつかを地方に移し、地方活性化の起爆剤にしようとしました。だが財務省や外務省を動かすわけにはいかず、霞が関では比較的、弱小省庁が候補に挙がりました。
この安倍政権の方針に「嫌だ」という声が文化庁の中でたくさん上がりました。文化庁は著作権や国語をはじめ、様々な文化、芸術を担っています。文化財にしても東京の博物館に多くが収蔵されています。東京にあるほうがメリットが大きいと合理的な意見を言い続けました。
官邸主導が強まっていたにもかかわらず、文化庁は安倍政権に忖度(そんたく)しなかったわけです。その意味で文化庁は、ほめてあげるべき省庁の一つです。
地方創生を掲げた文化庁に対し、京都側は「地方」にこだわったと、井上さんが記事の後半で語ります。
移転が決まり、文化庁の職員…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル